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ポマードとアンフルラージュ

Pomade and enfleurage

揮発性溶剤が登場する以前、蒸留に耐えられない花の香りをとどめる主な手段は脂であった。脂は香気分子を吸収し、保持する。その産物がポマード、すなわち花の香りを飽和するまで吸った脂の塊である。

アンフルラージュには2種類あった。冷浸法(コールド・アンフルラージュ)は常温で花を脂の上に並べる。温浸法(ホット・アンフルラージュ)はダイジェスチョンまたはマセレーションとも呼ばれ、溶かした脂に花を浸す。どちらもポマードを生み、ポマードはアルコールで洗って香りを引き出すことができた。現在この方法は主に博物館、講座、少数の小さな工房に残るのみである。

ISO 9235:2021はポマードを、花から得られる香りづけされた脂と定義する。香りが脂に拡散する冷浸法、または花を溶かした脂で温浸・浸漬する温浸法のいずれかによって得られる。


概要
方法花の香りを脂に吸収させる(冷浸法)、または溶かした脂に花を浸す(温浸法)
吸収材精製した動物脂(ラード、獣脂)または油
温度冷浸法:常温 · 温浸法:溶かした脂
期間数週間。新しい花を絶えず入れ替える
物理的形態ポマード:固形の脂 · エクストレ:アルコール溶液 · アブソリュート:粘性のある液体
代表的な原料ジャスミン、チューベローズ、オレンジブロッサム(グラースの資料による)
ISO 9235の用語ポマード(3.23);ポマードからのアブソリュート(3.1)

01冷浸法:ガラス枠と脂

要となる道具はシャシー(chassis)、すなわち木枠にはめたガラス板であった。ガラスの両面に、それ自体の匂いがないよう精製した脂を薄く塗る。脂の上に花を散らし、枠を積み重ねることで、花の各層が2層の脂のあいだに閉じ込められる。

約1日後に使い終わった花を取り除き、新しい花を並べる。この入れ替えを数週間続け、脂に強い香りが移るまで行った。この方法はジャスミンやチューベローズに適していた。これらの花は摘んだ後も香りを放ち続けるため、脂は熱を加えずに香りを取り込めた。

グラース市の文化遺産資料によれば、冷浸法は1750年ごろ、オレンジブロッサム、ジャスミン、チューベローズなど繊細な花のためにグラースで始まった。

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02温浸法:脂の中で花を温浸する

温浸法では、花を溶かした脂に入れてかき混ぜ、一定時間温かく保った後、濾して取り出し、新しい花と入れ替えた。熱によって香りはより速く脂に移るが、熱に弱い花の香りを変質させることもあった。

Chiris社に関する歴史研究によれば、17〜18世紀のグラースの香料業は、冷・温の両方で、マセレーション、インフュージョン、蒸留、および脂やオリーブ油による抽出を用いていた。同じ研究は、およそ1868年から1872年にかけてChirisがグラースの新工場に水蒸気蒸留、精留、温浸法を導入したと記録している。

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03ポマードからエクストレとアブソリュートへ

ポマードは油脂製品にそのまま使うことができた。香水用には、アルコールとともに繰り返しかき混ぜた。アルコールが香りを引き出し、脂はほとんど溶けずに残る。このアルコール溶液をエクストレ・ド・ポマード(extrait de pomade)と呼んだ。冷却し、残った脂を濾過で除き、真空下でアルコールを除去すると、ポマードアブソリュートが得られる。

ISO 9235はポマードを、コンクリート、レジノイド、CO2抽出物と並ぶアブソリュートの4つの正式な原料の一つとしている。古い文献には「absolue de chassis」という名称も見られるが、それがポマードアブソリュートを指すのか、枠から取り除いた使用済みの花の抽出物を指すのかについては資料によって見解が分かれる。

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04溶剤抽出が主流になった理由

アンフルラージュは、わずかな香りのために多くの人手、数週間の時間、大量の脂を必要とした。揮発性溶剤抽出は同じ仕事を数時間でこなした。グラースではChiris社が1898年に溶剤抽出棟を建設し、4,582平方メートルの建物は1899年に稼働して「la Mosquée」の愛称で呼ばれた。フランスの文化遺産記録によれば、その後も工場の古い区画では蒸留とアンフルラージュが続けられた。

20世紀を通じて、コンクリートが徐々にポマードに取って代わった。1967年にChirisはUniversal Oil Productsに売却され、これはグラースの原料メーカーが大手グループに吸収されていった時代を示す出来事の一つである。2020年にINPIが承認した地理的表示「Absolue Pays de Grasse」は、現在も揮発性溶剤や超臨界CO2と並んでアンフルラージュを認めている。グラースも参照。

アンフルラージュで処理されたジャスミンの割合を年ごとに示す数値がネット上に出回っているが、一次資料までたどれなかったため掲載しない。

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05ライブラリ内の例

ジャスミン
チューベローズ
オレンジフラワー
サンバック ジャスミン
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06関連する形態

アブソリュート
コンクリート
CO2抽出物
チンキ
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07出典

  1. ISO 9235:2021, Aromatic natural raw materials: Vocabulary、3.1節・3.23節 · iso.org/standard/77697.html
  2. Perrin É., Baumann M., Buttner O. (2016). Fondation, croissance, opportunités et déclin de la production des matières premières pour la parfumerie: l'exemple de Chiris (1768–1967)(香料原料生産の創設・成長・機会・衰退:Chirisの例). Cahiers de la Méditerranée 92 · journals.openedition.org/cdlm/8391
  3. グラース市、文化財カード第3号:Halle Chiris · ville-grasse.fr/wp-content/uploads/2025/06/FICHE-3-HALLE-CHIRIS.pdf
  4. フランス文化省、POP Mérimée PA00080934:Anciennes parfumeries Chiris, Grasse(旧Chiris香料工場、グラース) · pop.culture.gouv.fr/notice/merimee/PA00080934
  5. INPI、認定仕様書「Absolue Pays de Grasse」(2020) · base-indications-geographiques.inpi.fr

09/2026更新。数値は各出典に記載の年に従う。

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