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グラース

Grasse

グラースはカンヌの北約20キロメートルにある丘の町である。周辺一帯はペイ・ド・グラースと呼ばれる。ここではローズ、ジャスミン、チューベローズ、ミモザが栽培され、朝の数時間のうちに摘まれて、コンクリートとアブソリュートに加工される。

グラースはもはや花の大半が栽培される場所ではない。1920年代、この地域にはおよそ1,200〜1,500ヘクタールの花畑があった。現在残っているのは約40〜80ヘクタールである。グラースに残っているのは技である。どの花をどの時刻に摘むか、どれほど早く加工しなければならないか、アブソリュート1キログラムに何キログラムの花弁が必要か、という知識である。

このページは、花の暦、抽出方法、現在も稼働する原料メーカー、そして地理的表示Absolue Pays de Grasseを記録する。


概要
所在地フランス南東部、アルプ=マリティーム県。ペイ・ド・グラースはヴァール県とアルプ=ド=オート=プロヴァンス県にまで広がる
主要作物ローズ・ド・メ、ジャスミン、チューベローズ、ビターオレンジの花、ミモザ、アイリス、バイオレットリーフ
花の栽培面積約1,200–1,500 ha(1920年代) · 約40–80 ha(現在)
UNESCO無形文化遺産、2018年11月28日(28/11/2018)登録
GIAbsolue Pays de Grasse、2020年にINPIが認定
地域産業雇用11,330人、80%を輸出(アルプ=マリティーム県とモナコ、2019)

01なめし革業から調香へ

グラースは当初、毛織物で生計を立てていた。16世紀、町はなめし革、製靴、手袋製造に転じた。香り付き手袋はヨーロッパの貴族の間で流行しており、なめした革にはその匂いを覆う別の香りが必要であった。グラースにおける調香の最初の記録も同じ時代にさかのぼる。

1614年、パリの手袋職人は香りのエキスの製造・販売の独占権を得て、「gantier parfumeur」(手袋香水職人)の称号が定着した。1724年、革の取引が衰退するなか、グラースは手袋職人から分かれた独立の香水職人組合を設立した。

19世紀半ばから、グラースは本格的な工場を建設し、1860年から1910年の間に15の工場ができた。各社は完成品の販売をやめ、代わりに他社向けの濃縮エキスを製造するようになった。20世紀初頭にはレバノン、エジプト、レユニオン、続いてマダガスカル、コモロ、ジャワに工場を開いた。1950年以降、合成香料と他地域の安価な花により、グラースは栽培地から芳香産業の集積地へと変わった。

カトリーヌ・ド・メディシス王妃がグラースに調香をもたらしたという話は伝説である。フラゴナール香水博物館は、彼女がグラースを訪れた記録はないと指摘している。

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02花の暦

かつては村ごとに独自の花があった。ヴァロリスとル・バール=シュル=ルーのオレンジブロッサム、トゥーレット=シュル=ルーのスミレ、ラ・コル=シュル=ルーのローズ、ペゴマのゼラニウムである。以下の暦は、現在も栽培されている植物を扱う。

ペイ・ド・グラースの収穫期
植物学名収穫期備考
ミモザAcacia dealbata2月タヌロン山塊にはフランス最大のミモザ栽培地がある
オレンジブロッサムCitrus × aurantium春1本の木からネロリ、オレンジフラワー・アブソリュート、オレンジフラワーウォーターが得られる
ローズ・ド・メRosa × centifolia5月アブソリュート1 kgに約800 kgの花
バイオレットリーフViola odorata5 8 5月、8月葉のみ、年2回刈り取る
チューベローズPolianthes tuberosa夏球根は春に植え付ける
ジャスミンJasminum grandiflorum7 10 7月–10月夜明けに摘み、正午前に終える。約8,000輪で1 kgになる
アイリスIris pallida3年後に掘り上げる根茎は蒸留前にさらに2〜3年乾燥させる
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03花からアブソリュートへ

ローズとジャスミンは、ラベンダーやレモングラスのようには蒸留器の熱に耐えない。グラースはこれらを3つの方法で扱ってきた。歴史順に示す。

アンフルラージュ。ラードまたは油の層に花弁を並べ、脂が香りで飽和するまで毎日取り替えてポマードをつくる。1850年ごろに蒸気動力が導入されるまでは、オリーブ油の搾油機を使って脂を練っていた。現在この方法は主に博物館に残るのみである。

揮発性溶剤抽出。グラースでは1898年から工業的に用いられている。溶剤が花から香りとワックスを引き出し、溶剤が蒸発すると、ワックス状の香りの塊であるコンクリートが残る。コンクリート1キログラムはポマード約100キログラムに相当する。コンクリートをエタノールで洗浄し、冷却してワックスを固め、ろ過して減圧濃縮するとアブソリュートが得られる。

超臨界CO2。溶剤残留のない新しい方法で、地理的表示Absolue Pays de Grasseでは揮発性溶剤やアンフルラージュと並んで認められている。

花は摘み取りから3〜4時間以内に工場に届かなければならない。そのため工場は畑の近くにとどまっている。

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04原料メーカー

以下のメーカーの多くは、自社名で販売するのではなく、他の香水メーカー向けに素材を製造している。いくつかはその後、より大きなグループに統合された。

グラース発祥のメーカー
名前創業備考
Galimard1747同社の公表による年
Chiris1768現在は独立していない
Charabot18171919年からCharabotの名称
Roure18201991年にGivaudanと合併
Molinard1849
Robertet1850現在も同族経営
Payan Bertrand1854
Mane1871ル・バール=シュル=ルー
Fragonard1926博物館を持つ香水メーカー
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05地理的表示Absolue Pays de Grasse

2020年11月、フランス国立工業所有権機関(INPI)は地理的表示「Absolue Pays de Grasse」を承認した。食品ではなく工業製品・工芸品を対象とするフランスで10番目の地理的表示である。申請したのは協会Les Fleurs d'Exception du Pays de Grasseである。

この名称を名乗るには、アルプ=マリティーム県、ヴァール県、アルプ=ド=オート=プロヴァンス県の一部にまたがる指定区域内で花を栽培し、第03節のいずれかの方法で抽出しなければならない。最初の7つの加工業者は、Firmenich、Jean Gazignaire、IFF-LMR、Mane、Payan Bertrand、Robertet、Sotraflorであり、区域内の加工業者の約90%を占める。

したがって、アブソリュートのボトルに記されたグラースの名は法的な意味を持つ。花がどこで育ち、どのように加工されたかである。

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06現在のグラース

1930年、グラースでは約1,800トンのジャスミンが摘まれていた。2011年にはその数字は約20トンとなり、大部分が一家族によるものであった。グラースのジャスミンはエジプト産やインド産より約20〜30%高価である。世界のジャスミン生産の大半は、1970年代から1980年代にこの2か国へ移った。

この10年ほどで、新しい世代の生産者が戻ってきており、多くは一つの香水メーカーと結び付いている。ペゴマのMul家は1987年からシャネル専属で栽培している。Domaine de ManonとClos de Callianは収穫のすべてをディオールに販売している。2018年、グラース市長は香料作物のために70ヘクタールを確保した。

グラースには今も工場、研究所、養成学校がある。世界の花の大半はもはやここで育たないが、ここを通過していく。

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07ライブラリ内のグラースの素材

ページグラースとのつながり
プロヴァンスローズこの地域を象徴する植物。5月に摘まれる
ジャスミン・グランディフロラム夜明けに摘む。7月から10月
チューベローズ夏の作物
ミモザタヌロン、2月
オリス根茎を数年間乾燥させる
バイオレットリーフかつてはトゥーレット=シュル=ルーを代表する作物
ネロリ · オレンジフラワーヴァロリス、ル・バール=シュル=ルー
ゼラニウムかつてはペゴマの作物
ブルーム · ナルシサス · カシー地理的表示の対象植物に記載されている
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08出典

  1. INPI、認定仕様書「Absolue Pays de Grasse」(2020)。base-indications-geographiques.inpi.fr
  2. UNESCO、「ペイ・ド・グラースの香水に関する技術」(The skills related to perfume in Pays de Grasse)、代表一覧表、決定 13.COM 10.b.14(2018)。ich.unesco.org
  3. フランス元老院、情報報告書 r18-723(2019)。senat.fr
  4. フラゴナール香水博物館、「Histoire de Grasse, des tanneurs aux parfumeurs」(グラースの歴史:なめし職人から調香師へ)。fragonard.com
  5. Les Fleurs d'Exception du Pays de Grasse、「Iconic flowers」(象徴的な花)。fleurs-exception-grasse.com
  6. AFP / RTBF、「À Grasse, la centifolia, l'or rose des parfums de luxe」(グラースのセンティフォリア、高級香水のバラ色の黄金)(2025)および「Le jasmin de Grasse」(グラースのジャスミン)(2011)。rtbf.be
  7. Premium Beauty News、「L'INPI valide l'indication géographique Absolue Pays de Grasse」(INPIが地理的表示Absolue Pays de Grasseを承認)(2020)。
  8. Fragrance Foundation France(2021、2022)。Robertet、Payan Bertrand、Galimard、Givaudan、Fragonardの公式沿革ページ。

更新:09/2026。面積と生産量の数値は各出典に示された年に従う。